- 認知症の母に後見人をつけたい
認知症の母が施設で暮らしているのですが、通帳やお金など私が管理しています。
衣類などの必要品を購入して施設に届けたり、体調が悪くなると病院に連れて行ったりしているのに、遠方に住んでいる兄弟から使い込みしてるって疑われているんです。あなたがきちんと財産管理されていたとしても、長年一緒に暮らしていないと、そのような気持ちも生まれてしまうこともあるようですね。家庭裁判所に「後見人」を選んでもらい、本人の財産を管理してもらうのは一つの方法かもしれません。
コウケンニン?それはなんでしょうか?
「後見人」とは、現在判断能力を欠いていると考えられる方に代わって、財産などの管理をおこなったり、適切な介護などを受けられるよう生活を支援したりする人物のことです。ご本人の判断能力の程度により、「成年後見」「保佐」「補助」の類型がありますが、これにより支援の仕方が異なります。
なるほど。利用するにはどうしたら良いですか?
すでに判断能力が無い場合や不十分な場合、医師に診断書を書いてもらい、家族などが家庭裁判所に後見等の開始を申し立て、家庭裁判所が後見人等を選びます。後見人等は定期的に家庭裁判所に管理状況を報告する必要があり、また家庭裁判所の許可なくして一定の財産処分行為をすることはできません。
誰が後見人等に選ばれるのですか?
ケースにより異なりますが、家庭裁判所の申立の際に、後見人等の候補者をこの人(たとえば親族)にして欲しいという希望を伝えることはできます。ただし、必ずしも希望通りになるとは限りません。今回のご相談では、兄弟から使い込みをしていると疑われているという事情もありますので、第三者の専門家が選ばれるかもしれません。
私が望んで母の財産を管理してきたわけではないので、第三者にお願いしたいですが、費用のことなども気になりますね。
後見制度を利用することを前提にもう少し詳しくお話を聞かせて下さい。そのなかで具体的にご説明していきましょう。
- 1人暮らしで老後が心配
仕事もやめてひとり暮らしに慣れたけど、この先いろいろ考えると不安になってね。自分の身に何かあったときに助けてくれる人がいないし、高齢者を標的にした犯罪も多いし、歳を重ねてくると「もし認知症になったら」という不安もあるしね。
みながみな、認知症になったり、犯罪に巻き込まれたりするわけではありません。充実した老後をすごされている人も多くいると思います。しかし、先行きが見えない時代ゆえに最後まで人生の選択を自らしておきたいと願う人もまた多いかもしれません。たとえば認知症などの病気によって、自分の判断能力が低下しても、自ら決めた人生の選択を最後まで実現したいと考えるならば、「任意後見制度」を検討してみる価値はあります。
ニンイコウケン?それはどんな制度だい?
認知症など判断能力の低下に備えて、将来的に自分の財産を管理してくれる人「任意後見人」をあらかじめ決めておく制度です。自分の判断能力があるうちに後見人を決め、その後見人に何をどのようにしてほしいかを伝えておきます。何をどの程度まで後見人に任せるかは、話し合いで自由に決められます。そして、自身の判断能力が不十分な状態になったときに、家庭裁判所に申し立てをして、「任意後見監督人」を選任してもらいます。それ以降は後見人が任意後見監督人の監督の下、本人の意思に従って財産などの管理をおこないます。
なんか、難しそうな話だねえ。
ご自身の人生の選択を決めるものですから、決して簡単な手続きではありません。また判断能力があるときから、なんらかのサポートをした方が良いか、自身が亡くなったときの事務はどうするかなど、任意後見人に何をしてほしいか以外にも、決めるべき内容が多くあります。とはいえ、熟慮した自分の考えを後見人に伝え、あらかじめ契約しておくことで、判断能力が低下しても自分で選んだ生き方ができると思います。
時間はたくさんあるから、あと少し詳しく話を聞いてみようかね。
「任意後見契約書」は「公正証書」で作成する必要がありますが、私たち司法書士は任意後見契約書の作成支援をはじめ、任意後見人として委任を受ける場合もあります。ご自身の人生をどのように選択して行くか、お考えを聞かせて頂いてよろしいでしょうか。
-
成年後見まとめ
「後見制度」の中でも、家庭裁判所の選任した後見人等が判断能力の不十分な方に代わって預貯金の管理をしたり、本人に不利益となる契約を取り消したりして本人の財産を守る制度が「法定後見制度」です。「法定後見制度」には「成年後見」の他、本人の判断能力の程度に応じて「保佐」、「補助」があります。
判断能力が十分にあるうちに、契約によって信頼できる人に自分の判断能力がなくなった後のことを任せる制度を「任意後見制度(任意後見契約)」と言います。「任意後見制度(任意後見契約)」では当事者の合意により契約内容を柔軟に定めることができ、また自分が信頼する人に多くのことを任せることができるため、本人の希望に沿った身上監護、財産管理を実現することができます。
司法書士は、「法定後見制度」における家庭裁判所への申立書類作成をすることができますし、実際に成年後見人等に就任している司法書士もいます。また「任意後見制度(任意後見契約)」に関する業務をしている司法書士もいます。
「後見制度」の利用を検討されている方は、お近くの司法書士にご相談ください。